最近見た映画。

なんと映画館で見ましたよ。『硫黄島からの手紙』、『パプリカ』。
硫黄島は立派な映画でした。日本人は日本人が命を落とした戦争をアメリカ人じゃないと映画化できないのかな、と思いました。なんか日本人には撮れないきがする。星条旗のほうも見てみたかったです。

で、『パプリカ』。

パプリカ (新潮文庫)『パプリカ』 筒井康隆
これが映画化される、と聞き及んでおおまじですかそれは読まなければ、とスペイン行きの飛行機内で3回くらい読みました。で、何で読んでなかったんだろうと軽く後悔しました。
私は一時期熱心な筒井読者だったので彼の作品を結構多く読んでいるのですが、これは『残像に口紅を』『虚構船団』に続く何とか小説(メタ、かなあ。でも違う気がする。メタ、好きだけれど筒井さん)だという触れ込みだったので残像と虚構船団でかなりお腹一杯になっていた私は特に読む気も起こらずロートレック荘(これもあれか)とかアルファルファとかべトナム観光公社でお茶お濁してたのです。が、ふたを開けてみればひどく読みやすかったしとても楽しかったので食わず嫌いだったなぁと反省していたのです。
で、割合楽しかったものだからさっき書いたように短期間で3回も読んだので大分自分の中で世界観ができてしまっていたのでそれとアニメが違ってたら困ったな、という気もしていたのですがとりあえず非常に楽しみにしていきました。パプリカの声が林原めぐみというところで実はかなり引っかかっていたのですけれど。
見た感想としては、もったいない、でした。
なんか制作費が限られていたのだろうかと勘ぐりたくなるような同じシーンの使いまわしっぷり、プロダクションIGの映画の常連声優さんが一杯、林原めぐみ古谷徹は違うだろ、とか瑣末なことも気になったのですが、とにかく気になったのが話のはしょり具合。たぶん原作を読んでいたからだと思うんですけれど、なんか原作の話を噛み砕いて短くまとめてみました、というよりも、原作のこのページとこのページとこのあたりの話をピックアップしてとりあえず並べてみた、みたいに話がぶった切りになっている様な気がして正直前半は話にほとんどついていけませんでした。文庫本にして約480ページの長編(重量感のある分厚さ)を1時間半ちょいにまとめて後半の夢対決のところをたっぷり書きたかったらそうするしかないのだと思うのですが、うーん、あれは原作読んでなくても大丈夫なのかなぁ。読んでないほうがいいのかなぁ。
あと、大きく気になったのが、夢、しかもすき放題やり放題の悪夢といういくらでも遊べる題材を扱っているにもかかわらずそれを生かしきれてないというか、もっと醜悪なものにできたでしょ!もっとぐちゃぐちゃなものにできたでしょ!もっと既存のイメージから離れた悪夢を作れたでしょ!と言いたくなってしまいました。私はできないですけれど、えへ。
そして、話の盛り上がりの肝である夢が現実に浸食してくる、という場面もあんまり生かされていないような。なぜかって言うとそれまでの現実部分の描写が少なすぎるから現実自体が現実感をあまり持っていないような気がするのです。その上夢、現実の切り替えがあるときから夢と現実が入り乱れる状態までの変遷があまり見られずなんだかいつもおんなじことしてるようにしか見えなくて。だから、愛と現実の境界がなくなってすべてが混沌としだして登場人物たちの不安にこっちもそれにいやおうなく引き込まれていくなんていうトリップ感バリバリの楽しい瞬間がなくて。なんだかいつの間にかぐだぐだ引き込まれてて。ううん。もったいない。筒井もそれをうまくやり切れているとは思ってないですけれど、でももうちょっとうまかったような。
今日は水曜日だったので1000円で見れましたが(ラッキー)低下では少々もったいないと思ってたかもしれません。そういえば私は今敏があんまり好きじゃなかったということもいまさらながら思い出しました。
面白かったか、ときかれれば面白かったよ、といいますけど。でももうちょっと楽しくできたのかも、と思うと残念です。

ちなみに今日見てきた映画館はパチンコ屋の上にある映画館で、昔地元にあった唯一の映画館も確かパチンコ屋の上にあったよな、ソフトクリームがおいしかったんだよな、紅の豚見たんだよな、とちょっと何かを思い出しました。中もなんだか古臭いのです。昔はどこもこんな感じだったよなぁなんてまだ二十歳そこそこの大学生が言うことじゃないようなことも思わせてくれました。硫黄島シネコンのできたばかりの劇場で見たものだから特に。