つづき 長いです。

前夜に種蒔かれた偽息子からの電話を息子だと思い込んでる母は、翌日の朝に前の晩に教えられた携帯番号へダイヤルをする。

いつもの息子だったら、もしかして寝てしまっていて病院へ行けてないかもしれないし、行けていたら電話がかかってくるはず(前夜に偽物がそう言った。でもなぁ、今思えば何で翌朝電話するって念押ししたんだろうって気になるはずなのに、さらっと流してしまってるもんなぁ)なのに、10時まで待っても電話がかかってこなかったから。

あ、今病院の中だからすぐかけ直す

すぐかかってきて、
急性の扁桃腺なんちゃら(聞き取れなかった)で、抗生物質の点滴をしたら楽になったから今から仕事に行く。

仕事?そんなもん休みなさいよ。連絡して休ませてもらいなさい。

大丈夫だよ、体が楽になったから仕事行くから。

インフルエンザじゃ無かったんだね。

そう。

じゃ、そっちへ行かなくてもいい?

いいよ。・・・でもさ、ずっと言わなきゃ行けないって思ってて言えなかったんだけど・・・・・沈黙。

何??・・・(声の感じからなにかすっごくいやなことが起こってるっぽいと思い)内定取り消しになったの?

そうじゃない。けど・・・・子供が・・・・・

はぁ!!!!何それ(もうここですっかり平静ではなく、おやじに言わせると目がいっちゃってたらしい)。

人妻とつきあってて、相手が妊娠しちゃって、旦那さんにばれて・・・

で、子供は?どうしたの??

・・手術して・・・でも、旦那さん怒っちゃって(でもなぁんか違和感ある人ごとっぷりな話し方だったなぁと今なら思える)

当たり前でしょ!!

で、知り合いの弁護士さんに頼んで示談にしてもらったんだけど、手術代と慰謝料を含めて100万払う事になってて、それの期限が昨日だったの。

・・・だって、昨日は無理だったじゃん。

そう。携帯に何度も連絡が入ってた。で、さっき連絡をして今日のお昼まで待ってもらったから、後からちゃんと働いて返すから100万貸してくれない?

(そんなこと絶対にしそうにない息子だと思ってたから、なにがなんやら。お金を払えばいいのか・・って心境になり)100万でいいのね。

で、振り込んでくれる?

分かった。

じゃ、メモして。

(振込先は昨夜警察に連絡済み)ここでいいのね。

うん。ごめんなさい。おねがいね。で、一度に100万振り込むのは出来ないし怪しまれるから、知人の新築祝いに送るから大丈夫って言ってね。
(・・・?なんかそれもおかしいなぁと気になるも、その前の出来事が衝撃的でそれも流してしまったあほはは。)



って、ちょっと声は変なんだけど、息子のしゃべり方にとてもよく似ていた。
で、おじいの病院へ行く支度しながらいたおやじにざっと話をして、銀行へいこうとした。
が、おやじが、ちょっと待て!!なんかおかしいぞ!という。

じゃ、直接話してよと、もう一度ダイヤルしておやじと話をした。

知り合いの弁護士って何だ。だれだ。それと話がしたいから連絡先を教えろといっても、登録した自分の携帯でしか連絡出来ないから自分でするという(そんなのもおかしい)。だったらそっちからウチへ電話をするように連絡をしろと言って電話を切った。

その間に私は振込先の名前を入れてぐって見る。おかしい。弁護士なら絶対引っかかるはずだ。キーワードを足してみても出ない。おかしいなぁ・・・(だいたい事務所宛じゃなくて個人名ってところがすっごく変、と途中からおやじが気づく)。
おやじもちょっと声がちがわへんか?というが、風邪引いてるって言ってたし・・・パニクってる私はもう息子だと思ってしまってるし。

でも、その話が本当なら内定取り消しなんて事態になってしまうかもしれないと、心配した私たちは、おやじの同級生の弁護士に相談することにした。で、事務所開設の案内はがきをさがすよりぐったほうが早いのでぐって見ると、一発でちゃんと出てきた。
ふうむ、出ないってのはおかしいよ、少し引っかかるもまだ息子だと思い込んでいる私。

おやじが受付嬢にだいたいの話をするが、弁護士先生は出張中で電話に出られないという。緊急な用事なのでなんとか連絡をして欲しいと頼み込んで、おじいの病院へ出かける。
その日はおじいの退院やら今後の方針についてソーシャルワーカーの人と面談の約束をしてたから、携帯へ転送をかけて出かけた。

病院へ着くと同時に友人の弁護士先生から連絡が入る。ざっと話をすると、そんな弁護士はおらん!!と即答され、もしかしたら息子がだまされてるんじゃないかって言われる。で、書類があるならそれをもってとにかく帰ってこいと言えという助言を受けた。

その間にわたしがまた偽物に連絡する。


なんで、でんわかかってこんや。だいいち検索かけてもでてこん弁護士なんておらんがね。だまされとるんやないの?(違います。私がすっかりだまされておったのです)とにかく話がさっぱりわからんで今日帰ってらっしゃい。夕方までには帰ってらっしゃいよ。

わかった。じゃ、仕事の途中だから仕事に戻るから(いつもの息子ならバイト中は電話に出ないし、でたとしてもあのバックの静けさはないと思うから、そん時もいやに静かなところでおかしいなぁとは思ったんだけど、息子と話してるつもりだったんだよなぁ)。

そんなごちゃごちゃの中、気持ちを切り替えておじいの話をしてくる。
3月1日に退院で、どうやら要介護1の認定らしいから、デイケアとか配食サービスとかケアマネージャーが決まるとかそんな話。

偽物弁護士からも偽物からも連絡が入らないんで、また私からちゃっと帰ってこいの念押し電話をする。その時に、弁護士に相談するからと話をしたら、

え?弁護士に連絡しちゃったの?(しちゃったの?ってあんたのことでしょうがってイラッとする返答っぷり。そりゃそうだ、偽物なんだから本物弁護士に連絡されたら困るわな。だけど、今までの息子のめんどくさがりっぷりっぽいとも思ってしまったんだよなぁ。)

したよ。だから帰ってらっしゃいよ。それからじゃないと振り込みなんて出来ないからね。

わかった、わかった、仕事中だから、電話切るよ。


オイ!ふざけた態度とってんじゃねーよって気になってくる私たち。でも、まだ息子が不始末をしでかしてしまったと思っているので、なんとか後腐れのないようにきちんとしてやるために、もう一度友人弁護士先生に連絡をして相談に乗ってもらうことにした。
で、今日の夕方息子と二人で事務所へ行くお約束をした。

なんとも埒のあかない話ばかりの息子は、美人局にあったか、何か変なことに巻き込まれてお金が必要な理由があって芝居打ってるんじゃないのか、なんていろいろ想像して気の重い対策を練ろうと私たちはしていた。
とにかく帰って来てからの話だから、しつこく偽物に連絡を入れる。

夕方送迎に出かける前に連絡を入れる。

どこにおるや!いつ帰ってくるつもりなの!!

まだ、仕事で、残業がある。

いったい何時まで仕事なの!!

7時。それに、携帯直ったから取りに来いって連絡が入った。

7時!!何考えとるの。自分の事でしょ。内定取り消されちゃうに。

そっちは大丈夫。

大丈夫じゃないわ。それに、DoCoMoの携帯がいちんちで直るはずないじゃん。なんかあやしいことが多いなぁ。まええわ。今夜中には帰ってらっしゃいよ。明日弁護士さんに会う約束したからね。わかった!



とかなんとか、わけのわからん、どうにも怪しげな会話をして電話を切った。
それでもまだあやしいながらも息子だろうなぁと思っていた。
おやじと話をしても、どうにも怪しいよなって、あのびびりの息子ならこんな悠長な事としてないよなって。
パニクってる私も、息子だろうけどなんか怪しいとは思い出してきていた。

ウチへ帰るならいつ頃着くって連絡が入るはずなのに8時を過ぎても連絡がない。携帯を鳴らす。全然でない。移動中か?
携帯が直ったのなら(それも怪しい)と、息子の携帯を鳴らす。出ない。
んーーー。やっぱり移動中か?でも、修理中なら電源入ってないはずじゃね?ってことで、それをメッセージに入れる。

息子の携帯から電話が入る。



なに!どこにおるや!

学校。(バックにラッパの音が)

はぁ!なんでまだ学校!帰ってくるって言ったがん。

はぁ?何それ。そんな話してないよ。(あ!これだ。この声が息子の声だ。なにかつきものが落ちたようにさっぱり気分になる。)

だっってあんたが主婦に子供・・・

そんなこと、僕がするわけないじゃん。(そうだよ。そんなこと分かってたよ、だからびっくりしちゃったんじゃん)気をつけてよ。そんなときはすぐに僕に連絡してよ。

だって、携帯壊れてるって。

代わりの電話もらったって全部データ移せるから(軽く説教を食らう私)。おかあさんの携帯番号なんて聞かないから(そりゃそうだ。)。

あああ、だまされてたんだ。100万はらうとこだったじゃん。よかった。土曜日に行くからね。




なんて、えらく落ち着いた声で諭されてしまった私。ほっっとして笑えてしまう。おやじに連絡をして二人してだまされてたと知る。
夜遅いけど、友人弁護士先生にお断りの連絡をする。
えらく笑われて恥ずかしかったって。仕方あるめぇ おやじだもの ってね。


危ない。本当に危ない。私はころっと騙されてしまった。
テレビとか新聞の中だけのことだと思ってて、まさか自分の身に降りかかってくるとは驚きだ。
後から思い返せば、突っ込みどころ満載のバカなやつなのに、詐欺に遭うってこんな簡単な事だとは知らなかった。
半年前に居酒屋で知り合ってって、その頃息子は一人旅してたはずだし、示談が決まったのが三ヶ月前って、だったら正月に帰って来た時に何か言うはずだし、示談書に自分の判が押してないとか、示談を取り交わした席が旦那さんと偽物と偽弁護士ってのも変だし、だいたい同僚に紹介してもらった弁護士ていうけど、息子の同僚って誰?とか、同僚なんて言い方息子はしないし、帰って来たら突っ込みたかったことを全部聞いてやるつもりでメモまでしてて、なんてお馬鹿なんでしょうね私ったら。

なんにしても、振り込まなくて済んで本当によかった。
一人暮らしだったら、もう少し年食ってたら、きっと振り込んでしまっていただろう。
本当に巧妙だ。

ちょっと前に息子が鼻声だったり、携帯壊れて直すって言ってたり、どんぴしゃの偶然。

詐欺ってなにかがはまってしまうと簡単に引っかかってしまうって実体験をしてしまった。


一騒動終わって、警察へも連絡をして、携帯番号と振込先を聞いているのは大手柄です、なんて言われちゃって、はははと、笑うしかなかった訳の分からん出来事でした。

この冬はいろんな事が盛りだくさん 季節が変わればいいことあるかな かな