まともなおじい

義弟家族が来るって昼中に、ご機嫌斜めだったのがウソのように、落ち着いたここ二日三日。

昨夕も今夕も静かな会話になっている。
昨夕。
昨日は義母の命日だったので、お墓へ行ったら思わぬ人にあってなぁという。
それは義妹だったのだけど、嫁いで行ってからそんな偶然は一度も無く、だいたい月参りを欠かさない私たちだって滅多に人に会わないようなところで、いきなりぬっと墓石のむこうに人の頭が現れたら驚くだろう。
びっくりしてなー。ってひどく力を込めていうんで、きっと心臓が止まりそうなくらい驚いたんだろうと思う。
ほらぁびっくりするわねーと、言う私に少しだけ満足そうに、食卓を立っていった。

今夕。
今日ハタ(畑)行って、サツマイモの苗植えてきた。どうやろなぁ。という。
昨年までつくっていた場所は、もうイノシシの食事場になってしまってるんで、今年はゴーヤ畑にして、サツマイモは別の場所につくることにしたってのは、前から聞いてたんで、
どうやろうねぇ、と相づちをうつ。

そこから、この間捕まったイノシシの話しになった。
私はそのイノシシ話を初めて聞いたふりをしようかどうしようかと考えながらおじいの話しを聞いていた。
あれ?おじいも私も気持ちが静かなまま会話になってるがね、なんて時間をやり過ごしていたら、気になっていたイノシシのその後が判明。
鉄砲を撃つ人が来たんだけど、今はその時期じゃないから鉄砲は使えないって言われたんだと。
で、大きなクレーンを使う土建屋さんがイノシシをつり上げて、どうやってどこへ運んだか分からないけど、どこかへブツを持って行ったらしい。

ここからは、当たり前の想像だがたぶん当たってるだろう。
つまりは、近隣にあるイノシシ料理を饗するところで引き取ってもらったのだろうという。

うり坊を引き取った一人は、あまりにも可愛いので、今ミルクをやったりして育ててるという。
で、大きくなったその後は、どうやら胃袋へ収まるだろうって話しだ。



いただくよ そうしてみんないきてるよ だからごちそうさま だぞ。


おじいと会話の出来た夜にもごちそうさまだ。


そうそう、今日の月の出はすっごくきれいだったよ。
ぽんっとあがったお月さまが、遠くの山の稜線のうえにあってね、2回目の送迎の時には星の輝きを消してしまうあかるいひかりを空中に放っていたよ。
月の光を浴びるって気持ちいいんだよ。みんなそうかなぁ。