消えてなかった

夕飯の支度をすべと、台所へ入ろうとしたら、おじいが嬉しい顔しながら、割り箸みたいな切れっ端を差し出した。

”竹やで上手いこといかんかったで木にした。これなら出来る。”と胸を張りかけた。
”や、竹がいいんやに。”
”家にある竹では厚さが薄すぎて五角には出来ん。ほんやで、厚さのあるこの木にした。”という。
”箸を作ろうと思ったら、孟宗みたいな太いやつなけないかん。”とさ。

なるほど。やっぱり大工の心持ちの火は消えてなかったんだ。

昨日探した竹から五角箸になるネット写真も渡したら、ご飯が出来上がる前に、三本の試作品を持って来た。
なんと、不揃いな辺ながらも形は五角になっている。そのうち一本は割にきれいな五角に出来上がっているではないか。

うほほほ。やっぱしおじいはえらい。

”なかなか難しいと書いたったしなあ。”と、神妙なことを言いながらも、きっと日々それらしいものになっていくことだろう。

”きれいに出来たら、娘にも頂戴ね。就活でへろへろしてる娘の励みになるかもしれんで。”と、注文をしておいた。


ますます、気を入れて作ってくれるはずだ。

おじいが元気でいてさえくれれば、どんなことになっても私たち家族は食べるに困ることはないだろうって思うね。

喜寿だけど もっともっと白寿までも元気でね そこまでつきあえるか自信がないが だな。