メモ。

最近読んだ本。

美食倶楽部―谷崎潤一郎大正作品集 (ちくま文庫)

美食倶楽部―谷崎潤一郎大正作品集 (ちくま文庫)

春琴抄 (新潮文庫)

春琴抄 (新潮文庫)

(まんじ) (新潮文庫)

(まんじ) (新潮文庫)

谷崎はちょっとまえに中学から想い人、『美食倶楽部』を先だって読みましてからちょっと読みたくなって続けて読んでみた。谷崎の慣れてない上方言葉は読みにくくってしゃあないわけですが、これが女の口からぬるりとでてくるとそれはまあ艶っぽいんでしょうなあ、とちょっとどきどき。卍は背表紙を読んでしまうと最後の落ちにつながるところがちょっとわかってしまうのはどうなのか。古典にありがちな落とし穴なんですが、改善してほしいです。卍は最後の落ちまでが長いし訳わかんなくなるし、うーん、完成度はそこまで高くないのかも、と痴人の愛にしときゃよかったなあ、なんて思ってしまう。この人はフランスイギリスの唯美主義に影響されてるけれども、やっぱり耽美主義、としかいえないなあ、とむかーし刺青を読んだときと思いを同じくする。春琴抄の目にも鮮やかな山場がいとおしくってよいです。これくらいの短さのほうが読みやすくていいなあ。『美食倶楽部』はちくまだからちょっと高いですけど、私としてはこの短編集のほうがずっと面白いと思う。趣向が違うので長編好きには物足りないとも思いますけど。美食倶楽部はもう少しエロかったら!あともう一段階行ってほしかったなあ、と長年の思いがある分思ってしまいました。余計なお世話なんですが。ちなみに凄く中華料理、しかもとっておきにおいしい中華が食べたくなるので、欲求不満時に読むのは注意が必要です。全体にポーとかの短編怪奇小説を真似たかったんだろうなあ、と思うのですが、そんな洋物主義(短編のひとつで少々自嘲気味なほど)の中でのハンサッカンの最後の2ページくらいの東洋思考は読む価値、大です。ちょっとぞっとするよ。
寒椿 (新潮文庫)

寒椿 (新潮文庫)

四人の女(より良い言葉があるだろうけれど見当たらない)の人生での舵の取り方を主観(主人公視点)と客観(作者の分身視点)をけっこうない交ぜな感じにして淡々と時系列を追うように書いてあるのがそっけなくもあり生臭くもあり。この中のどの主人公に心を寄せるか、どこに嫌悪感を感じるかでそのひとのあり方生き方が出てくるような気がします。貞子の美しさに心を奪われ、妙子の根性に心引かれる私は、やっぱり美人キャリアウーマンが理想なのでしょうね。無理だけど。
どうでもいいんですが、最近女の生臭さを感じる本(というか表題とか雰囲気とか)がいっぱい出ていてなんだかなー、という気がします。社会が疲れているのかと、倉橋由美子がそれを40年も昔に今よりもずっとずっと衝撃的にそして無機質にやったではないか、と、いつまでたっても『聖少女』から抜け出せ切れない私は思う。でも一旦絶版気味になった文庫版聖少女が復刊したのはまあそういう社会の流れなのかもしれないとも思っています。