キュウリの力

我が家は緑茶を飲まない。義母が癌になってからマクロビオテック(今こんなに脚光を浴びるとは想像しなかったけど)をちょっと囓ったせいで、毎朝いろんなお茶っぱをブレンドしてやかんでお茶を沸かす。というか、煎じるっていったほうが当たっている。
そのふつふつと小さく沸騰しているお茶を、やかんから土瓶に移し、それを湯飲みに注ごうとして土瓶を持ち上げた時に、土瓶のふたをしないでいたのに、斜めに傾けた方向が逆になって、取っ手を持っている右手にざぱっとかかった。

熱い、めちゃくちゃ熱い。すぐに水道の水をかけたけど、それがとてもぬるくてやけどには全然効かない感じだ。
熱いなぁ、これはちょっとヤバいかもと思ったが、そのまま家事を続けていたら、お茶のかかったところが見る見る赤くなり、じんじんじんじん痛みが増してきた。
やけどと言えばキュウリ。冷蔵庫に残っていた、おじいの今年のキュウリの最後の一本を、ぐしっと折り、薬味おろしでおろし、おろしキュウリを、人差し指、中指、薬指の三分の二くらいにわたっている部位にのせて救急バン押さえる。
はぁー気持ちいい。と思ったのは一瞬だ。すぐにじんじんと痛みがぶり返した来た。これ以上はできることがないので、キュウリの水分がなくなるまでは我慢するしかない。1時間ほど後に、もう一度キュウリをおろして、貼り替えた。

はぁー、気持ちいい。さっきほど痛みはぶり返してこない。いい感じだ。

お昼の支度の時にはもう痛みもほとんどなくなって、今ではそんなことがあったことも忘れてしまっているほどだ。

えらいぞ、キュウリ。キュウリの力に乾杯だ。

そこで思ったのは、指三本分だけでもこんなに痛いのに、幼児虐待で熱湯を浴びせられるお子の痛みを想像したら、胸がとても苦しくなった。

どうか、世の中や家庭が平和でありますように、と願った小さなやけどの日だった。