メモ。

最近読んだ本。

知と愛 (新潮文庫)『知と愛 ナルチスとゴルトムント』 ヘッセ著 高橋健二

いまさらながらヘッセに挑戦してみました。
ヘッセといえば中一の時に新潮文庫の百冊で三冊買うとYondaくんキーホルダーがもらえる!というキャンペーンに応募するために買った一冊、『車輪の下』があまりにも面白くなくて10ページくらいでやめてからずっと敬遠してきたのですが、なんだか最近読みたくなったので買ってみました。
中一の時にあきらめた時のヘッセの感想としてはとにかく暗澹、禁欲的、自閉的と言うもので、マンとかホフマンとかカフカとかリルケ(ちょっと違う?)とかのザ・ドイツ文学!って感じで、同時に買った『ハックルベリー・フィンの冒険』が底抜けで明るい(あれもアメリカ文学って感じだね)ものだったものだから特にその雰囲気が無理ーってなってしまったものでした。
でもあれから8年(8年!)もたった今ではドイツ文学も少々たしなんだし、何もそんなに毛嫌いしなくてもいいだろうと思い、ヘッセ美少年物で名高いデミアンかナルチスを読もう!と思い立ちとりあえず前々からその名前が気になっていた『知と愛』を手にとってみたわけです。

すると印象ががらりと変わってしまいました。
中身は、知が愛を芽生えさせ、知の影響を受けながら愛を開花させ、果てには愛が知を凌駕し包み込む様をそれはもう美しくやさしく丁寧に書き記したまさに知と愛が超硬度で絡み合う壮麗な一大交響曲だったのです。
愛は奔放でわがままだが美しくすべてを包み込む優しさを持つ。知は禁欲的で冷徹だが荘厳ですべてを導く力強さを持つ。この二つはお互いに反発し合いお互いに高めあう最良の友なのです。
それを愛の象徴ゴルトムントが知の権化ナルチスの影響を受けながら成長する様子にのせて切々と語りかけてくるのです。そして私たち読者は美しき輝ける青春への永遠の憧れを抱きながらゴルトムントと共に愛を知るのです。
すばらしい本でした。うん。美少年ものとは違ったのが少々意外でしたけれど。愛は偉大だ。

ちなみにこの本で説かれている愛は母の愛が根底にあるのですが、これはマリア信仰なのかヘッセの母への思いなのか、単純に大いなる母というものをおいただけなのかちょっと分かりませんでした。ヘッセの略歴を読んでも母への強い思いがありそうな気がしなかったし。どうなんでしょうね。


機会があったらデミアンを読みたいなあ。車輪の下はその後で。