じんわり

生まれてからずっとこの町に住んでいて、そこを通ればあって当然だった建物が、今日は形がなくなってしまっていた。もうずっとずっとそこにあったので、確かにとても古くて汚くてここで本当に新幹線の切符が買えるのか?といぶかしい気持ちになる見た目ではあった。建て替えまたは移転すべき駅舎ではあるが、廃材の山になっていたのを目の当たりにしたら、思いもかけずじんわり悲しくなって、泣きそうになってしまった。
時代の流れにのれず、今ある目の前の事柄にしがみつく土方の気持ちはどんなだったんだろうと、まだ山南さんのことが頭から離れない。