泣きたがる

「若くて読者体験の乏しい、しかし「泣ける」「感動」を求めている読者にとって、(ま注:世界の設定ね)少しもリアルである必要はないし、小説が文学として上質である必要もない。もともと彼らは知識や教養、歴史や文学といった体系的な共有財産に連なることを望んでいない。互いに似たり寄ったりの、あまりぱっとしない現実から遊離した、ウソみたいに甘美な物語に酔えることのほうが重要なのだ。…中略…実人生とは没交渉の「物語」だからこそ、彼らは癒される。そんな彼らが出会えた「感動」は、他人から見てどんなにありきたりで「通俗」であろうと、商業ベースに踊らされていようと、個人の範囲では真実なのだ。それが一人一人の「世界の中心」であって、実はこのミリオンセラー現象はごくパーソナルな、孤独の渇望の大集合なのである。
生まれながらに「活字まみれ(ま注:携帯とかメール)」で「物語まみれ(ま注:ロープレ・ライトノベル・ファンタジー)」である彼らと、活字と物語を母胎として長い複雑な歴史を築いてきた我々文学との間の大きな距離。同じ「小説」を持ちながら、両者は異文化であるかのようだ。その隔たりは拡がるばかりなのだろうか。」清水良典=文芸評論家
だって。とりあえず写してみた。

「生まれが同時代、仕事が同業、といった身近な人から学ぶ必要はない。何世紀も不変の価値、不変の名声を保ってきた作品を持つ過去の偉大な人物にこそ学ぶことだ。」ゲーテ