いつまでも元気でね
よっぱらったおじいを上手くあしらえないので、夕食時には会話というより、うん、そうだねとか、へーとか、そうかなぁなんて返事をして、話の接ぎ穂をつがないように、そーっとその時間をやり過ごすようにしている。
夕食の準備をしながら、はて、と気づいた。
そう言えば、最近あんまりぼけて絡んだりすることがなくなってる。あんまり冷やっこい嫁の態度に、下手にしゃべりかけない方がいいと、おじいも思っているんだろう。
今日はおじいの誕生日で、おじいの好物(嫁に来た時に義母にそう教わったまま)の茶碗蒸しを食卓にのせた。バースデーケーキは3人では多すぎるのでそれはやめて、これもおじいが好きだったはずのカップのプリンアラモードってな風のケーキを用意した。
ろうそくたてる?と聞くと、なんにも目出度いことなんかないで。と、毎年同じ台詞の始まり。
”じゃ、一本だけね。”
”おらあ、誕生日なんか生まれてこの方祝ってもらったことがないで。”とこれも毎年同じ台詞。
”いいがね。こっちの気持ちだで。”と、はっぴばーすでーつゆーを歌って、
”ふってしてよ。”といっても、やらないのも毎年のこと。
だいたいご飯が口の中に入ってりゃそりゃそんなことは出来んってなもんで、じゃって私がふってして、私が一人でぱちぱちぱちと手をたたいて、
”おめでとー”。ということで、一応小さなセレモニーは終了。
カップにふたをして、スプーンを添えて、
”いつ食べてもいいでね”と、おじいのほうへ寄せておいた。
食べ終わって、プリンを持っておじいが、
”ありがとね。”と、照れくさそうに精一杯って感じで言うので、
思わず”いつまでも元気でいてね”と返事をした。
やっぱりおじいは、ひねくれた言い方で、
”それはわからんなぁ”
”いかんいかん、元気でいてくれな”って。
今年はおじいが喜寿の年なので、日曜に義妹、義弟家族と集まって宴会だ。
そうなると、勝手に私はアウェイ気分になってしまう時もあるんで、酔っぱらいすぎないようにしなきゃいけない。
娘がその日の為だけにでも帰ってきてくれるらしいので、私を管理してくれるであろうと期待している。
それよりなにより、娘が帰省するかもってだけで、嬉しいんであります。