話をする

何がきっかけだったのかさっぱり誰にも分からない状態で塾に来られなくなってしまったお子がいる。中学受験を控えてるので周りは気が気じゃない。
こう書くと受験戦争に巻き込まれてかわいそうねって見方もあろうかと思うが、それは大いに違う(なんでかはまた機会があれば)。
授業中のおやじに変わって私がお子のお母さんと何度も何度も電話で話をする。そのお姉さんをお迎えに行くのでやっぱりそのことを話す。おやじともその話ばかりをする。誰と話してもお互いの気持ちは分かる。
ただ本人のお子とだけが気持ちが分かり合えないようで、だれもがもどかしい思いでいっぱいなのだ。
液体窒素で凍らしたように一瞬で固まってしまったように見えるそのお子の気持ちも、ちゃんと見てて時間が経てばもとに戻るはずだ。待ちましょう、私たちは待っていますから。と悩み深いお母さんに伝えた。


最近おじいとあまり話せない。家の東側はうちから見上げる崖のようになっている。そこはその上に建つマンション(社宅になってる)の会社の土地らしいので、年に何度かその崖面に会社からの草刈り隊が入る。
昨日の朝早くから草刈り機の音が一日中うなっていた。で、夕食時だ。
「うちの横手だけきれいに刈ったるなぁ。前(段々畑後なので一段下の家)のおばあがなんかいってこーせんか?」とおじいがいきなり話し出した。
「や。別に。」
「あんまりはっきり分かれとるで・・・。」
どうやら、おじいが何か草刈り隊の人に声をかけてそうしたんじゃないかと勘ぐって嫌みを言いにくるって思うらしい。
「裏の方も見に行ってきたら、そこも刈ったれせんでなぁ。(家の幅の範囲だけにしても)ほんでも俺が刈るよりさっぱり刈ったるぞ。」
最初はそこにある電柱管理のためだけに、その周りに絡まってる草を刈りに来た電力会社の人かと昼ご飯の時に3人で話していたけれど、それにしては範囲が広いから、やっぱり社宅の会社の草刈り隊だろうと私は考えをかえていた。
「もしかしたら明日もくるんじゃない?」
「ほんなことあらすか!(そんなことは決してないはずだ)ちゅーはい(電力会社関連?)がそんなことせすか(するわけがない)。」

ここだよ。ここで、
「そうかなぁ?ちゅーはいの人やないかもしれんに。誰も確かめとらんでしょ。」と、去年くらいなら返事をしただろう。でも、今それをするとまたいきなり怒りだしそうなので、私は言葉を飲んだ。
もしかしたら言い合いにはならなかったかもしれないが、そうならないという保証が無いのがいまのおじいなのだ。自分の思いを否定されるのがどうにもだめなように思えて、必要以上に私が警戒してしまっているのかもしれない。でも怒らせるよりもだんまりの方がまだましよね、とそうしてしまう。
そしてお互いに話をしない二人の静かな食事時間となるのであった。


ここ2日間で娘と息子とそれぞれが一人でいる時に電話で話した。
なんというか、東京にいる時の息子、京都に一人いる時の娘と声の感じが違うんだ。
家で二人そろってる時のような少しの緊張感もないというか、安定したというか、なんともやわらかい声色に聞こえたんだ。なんでかわかんないけどそう感じたんだ。なんか嬉しかったなぁ。
小さないざこざはありながらも、いい時間を過ごしたんだろうなぁと想像したんである。

いろんな話しがあるよな。思いあえるってのがいいんだよな。誰とでもそうできたらいいよな。