おとなしくなってる

目の前に垂らされた釣り糸に思わず食いつきそうになりながら、まだ食いつかないでえさの周りをちょいちょいつんつんしてる状態とでもいいましょうか。

その建託屋とは20年くらい前からつきあいがあって(こっちは倉庫2棟ね。これも管理やらなんやら結構面倒だったのを忘れちゃったんかと思う。それにまだおじいも50代だったから自分で対応しきれると私たちも思ってたしね。)、ちょくちょく担当が変わるその度に挨拶に来てたんだ。今までは今回の土地が山のままで調整区域(よく分からんけど何かが決まらんとどうにも出来んらしい)だったんだけど、万博のお陰でそれが外れて宅地造成されたんだよ。
で、2区画あるから一つは売っちゃえばいいとか言ってたのに(おらぁ持っとっても仕方ないでな。どうせあっちへは持ってけんしってさ。そういう事言う人に限ってそうでもないだろうに)、その辺りに新しい高速が出来たり、豊田関連の工場が出来るとかで、アパートを造りたいような気になってたところへ、ちょうど新人が挨拶に来て、同じようにそこに土地を持ってる知人が建託屋でアパートを造る事にしたって話を聞いてから(そんなに軽々しく他人の事いう営業マンってのがまず信用できんがね)、先超されて悔しくなったのか、釣り糸に食いつきかけたってわけさ。

もともとは山林組合のみんなの物だったけど、区画ごとの所有者になった人たちが、上手い事建築やさんと話をすれば、やりようによっては八事とまでは言わないけど、ここら辺りでは高級住宅地に作れると思うんだ。その中でもおじいの持ち分はなかなかいいポジションにあるし、メインストリートになる道路にも面してるし。そんなとこへあんな評判の悪いアパートなんか建ててどうするよ!って怒れるわけさ。おじいが土地の税金払えないわけでもないし、土地のまま持ってりゃいいじゃん。借金までする必要がどこにあるかってことよ。

その土地を狙って建託屋が来てると思うのさ。地方を土地持ってる老人たちとどうやらあちこちで問題が起きてるらしいし。だから判例があったら説得力があるかなってことね。判例が見つからなくても裁判が起こってるって事実だけでも受け入れてくれればって思うんだよ。

あんなに自分だって嵌ってるのに、私がネットで拾った物や意見には同意しかねるっておやじだし、おじいはもう建託屋を信用しちゃってるから私がなんか言ってもハナから聞く耳もたねーし。
そこはそれ、お利口さんな孫娘の話だったら信用するってもんよ。
ローの人に聞くのに実家の話だってのが恥ずかしいと思うんだったらやめてもいいけど、私は全然気にならないからその辺の判断はあんたにまかせる。


すげー、ビジネスモデルだな。
借金させてアパートを建てさせ、建築料で搾取しまくったあとも、
手数料で搾取しながら、さらに賃貸料をガンガン下げていくという…。
判断能力が低下しているお年寄り相手の、健康食品やふとん販売の
SF商法のアパート版みたいな。

って事だと思うんだよ。建託屋が身売りしてるらしいよって去年の暮れのさる掲示板の書き込みなんだけどね。
麻布オフィスってとこも頑張ってたらしいけど。
なんにしてもぐってみるとたくさん出てくるって事自体でだめなのに、それはおじいには絶対伝わらんことなんだよ。

だってね、今日自分の携帯さわってたら間違ってインターンシップ中の息子にかかっちゃったらしくて、息子からかけ直してきたらしいだよ。
「こんなことは初めてのこっちゃで。」とか言ってるけど、去年も自分の携帯さわってて知らないうちにTV電話かけてんだよ、授業中の息子に。
そん時の請求書がまたすっごいことになっててね、驚いたもんよ。
でも、そんなこと全然記憶にないらしいよ。
夕飯を呼びに行っても寝ちゃってて起きてこれなくてずいぶん時間が経ってから食べに来て、
「朝かと思った。こんな事はじめてのこっちゃな」って。

最近おじいにとって初めての事がとても多いんだよ。いちいち報告できないくらいたくさんあるんだよホントに。おじいにとって初めてじゃないって知ってる私はもうがっくりなんだよ。でも、平静を装うってのが難しくてね、つい無視するに近いものになってしまってやっかいな気分になるんだよ。


だから余計に心配するんだけど、しっかりしてると思ってもやっぱり老人なんだね。
自分が思い込んだ以外の事は一切拒否なんだよ。自分で拒否してる自覚のないまま。

で、明日息子が帰ってくるとおじいが耳にしてしまった。
んーー。また嬉しがって舞い上がってめんどくさい酔っぱらいになってしまわない事を祈るしかないなぁって気分なんだよ。

事実より前にそのこと(自分にとって嬉しい事は特に)を知ってしまうとものすごく面倒くさいんで、帰ってきてから息子がいるよって言うつもりだったのになんという偶然なんだろうね。


ぼんやりと年を重ねて ほよよんとみんなが幸せって難しいね だぜ。