珍客

家の台所には勝手口がある。義母がいた頃はたまーにそこのドアを開けたりしてるのを見たことがあるが、何年か前におじい開けたり閉めたりした後に、全く押したり引いたりが出来なくなってしまった。
そこの狭いタタキになっているところは、今は缶やビンやらと生ゴミ箱が置いてある。流し台の下のすき間からねずみがそこへ降りて行き来をしているのを、たまに見かける。
先日りんごを義母に供えておいたら、ねずみが囓ってしまったので、その勝手口のタタキに常に置いてあるねずみ取りの上に囓られたリンゴを置いておいた。
その後、毎日少しずつ食べられて行くリンゴを確認していた。
今朝、ゴミの日なのでそのリンゴを横目に見ながら生ゴミをポリ容器から出そうとした。
あれ?なんか動いてるよな?ん?いやに長いものがくねくねと・・・・・。
あんれーーーー!ヘビじゃん。身体全部がねずみ取りに張り付いてしまってもがいてる。助けてやりたくても直にヘビをつかんでめりめりと剥がすなんて事は出来ない。
困った。そのままにしておけば、そこで絶命してしまうのは火を見るより明らかだ。それではまことに寝覚めが悪い。うぅ。どうしたらいいんだろう。
ねずみ取りにくっついたらいけないものを取る時用にベンジンが置いてあるのを思い出した。自分の手にくっついてしまった時にもベンジンを使う。が、ヘビに使っても大丈夫なもんだろうか?
いや、そんな事言ってられない。まず、しっぽの方へベンジンをかけてみた(もちろんずいぶん離れた上の方から )。
お?なんか動きがよくなった。うねうねうねうねして身体が自由になりかけている。
よし。上部半分の方へもどぼどぼとかけてやる。
おぉ。ねずみ取りから身体が剥がれて行くではないか。
頭部だけが張り付いている。頭からかけてしまってもいいんだろうか?
私は助けるためにやってるんだからね。決して苛めてるんじゃないんだからねとヘビに声をかけながら頭部にもベンジンをかける。
やた。身体が全部ねずみ取りから剥がれ、タタキの隅に移動していった。

ああ、でも、家へあがられても困るし、とカサカサという音だけ聞いてる内に、やっとおやじが起きてきた。
ざっと今の状況を説明する(ってか、もっと早く起きてくれたらいいのに)。
ヘビは平気だからと、缶拾いやゴミ拾いに使いみたいなかねのはさむヤツを持ってきて、身体中に砂やら小さなゴミやらを付けたヘビをつかんで外へだした。

でもねちねちの身体をなんとかしてやりたいと思案の後、ベンジンのお風呂に入れてやった。
果たしてヘビは身体をねじって暴れる。ねちねちは幾分取れたようだが、元気がなくなったようにも見える。
もう山の方へ持っていってやろうとふもとになる草むらへおいた。ほとんど動かない。
半分諦めて家へ戻った。1時間ほどしてそこへ行ったらいなくなっていた。
とりあえず、身体は動いたようだ。

九死に一生を得たのか九分九厘だめだったのか、どっちだったんだろう。
床下から這い出てきた体長40cmほどのちいさなシマヘビのこの後はもう私たちの関知するところではない。元気を取り戻してくれてるといいなぁと思うのであった。


でもさ、ねずみとりのねちゃねちゃのままにしておいた方がよかったのか、ベンジン風呂に入れたのは間違いだったのか、どっちだと思う?と、理系娘の意見を求めてみる。


歓迎出来るお客さんの 訪れる家が いいんだけどなぁ だす。