見ないふり

自業自得でこけてる娘にはなんの言葉もかけてやらないが(大事に至らなくてほんとよかったよ、ったく)、いつだったか電車の中で見て見ぬふりをしている人たちがネットでも話題になって事があったよね。
それとどっちが先立ったかもう忘れてしまったけど(この間東京へ行く時)、ローカル電車からJRに乗り換える時に階段を急ぎ足で上り、その先のホームへのコンコース(っていうかアレ?)が目の前に開けたら、通路の途中になんか大きな固まりが見える。最近とみに遠くの物が判別しにくくなってきたので、それが人なのかなにかの荷物なのかわかるまでには相当歩いて近づかなきゃいけなかった。
反対側の電車が到着してたくさんの人がそのものの横を知らん顔をして通り過ぎていく。ってことは、人が倒れてるんじゃないのだな、でもなぁなんとなく人が倒れ込んで横たわっているように見えてきたんだけど、だれも声をかけようとしていない。んん?と、思うも私が声をかけられる距離ではない。が、やっぱり人が倒れてると確認出来た。私が側まで近づいた時には声をかけようと思ったその時、私の先の方で女の人が声をかけた。でも、何も出来ないように困っている。周りの人は相変わらず素通りだ。一体何十人の人がその倒れてる人の横を通り過ぎていったんだろう。だって、最初に倒れてる横を通り過ぎた人はきっともう改札に付いているくらい時間が経ってる気がするし、その時に一言言ってくれれば、駅員さんが確かめに来てもいいくらいの時間は経過していたような気がしたのに、駅員さんがこっちへ向かってるような気配は全然なかったもの。
私はその女の人の横を通り過ぎる時、私の乗りたい電車が入ってきたので、一番最後の車両に乗っている車掌さんに連絡して貰おうと思い、走った。その女の人が改札まで戻るより車掌さんから無線か何かで連絡して貰った方が早いだろうと思ったから、その女の人に声をかけて横を走り抜けていった。その女の人は心配そうに声をかけたりして暫く側に付いていらした。電車に乗り遅れても構わない風に。
私はダーーーッシュで電車に近づき「あそこに、人が倒れてるんです。」と車窓さんに声をかけて、それをその女の人にアピールした。

車窓さんが電車から降りて、倒れてる人を目視して受話器をとって話し始めた。それを確認して女の人も同じ電車に乗り込んできた。

それですぐに電車が出発するかと思ったら、連絡に時間がかかっているようでなかなか電車が発車しなくて、理由がわからない乗客の人たちの苛立ちの視線が私に向けられてるように気がして、ちょっといたたまれなかった。
数分遅れて電車が出発して、やっとほっとしたのだった。

でもね、その人は具合悪そうだったんだよ。原因はお酒だったかもしれないけど(お昼少し前くらいの時間がだったと思う)、でもそこで倒れてとても苦しそうにしているのは事実なんだよ。あそこを通り過ぎていった人たちって一体どういう気持ちだったんだろうって、ほんとに不思議だった。
その後どうなったのかは確認しようがないからわからない。でも、その女の人も私も知らん顔をして通り過ぎることは出来なかったってことだ(たった二人だったけど)。

もしも、半べそかきながら、ぷりぷりしながら、明らかにおかしい自転車と格闘してる人を見たら、私は声をかけることだろうと思う。

今日の夕食のときにおじいが
「ほおいや は○○くん(同じ組の一人暮らしのおじさん)最近見んことないか?」という。
「や、毎朝くらい喫茶店で会うよ。」
「ほうか。」
「ほれより、裏のおばさんに会わんけど?」
「や、元気なもんや。今朝も元気やったぞ。」


ここで暮らしている限り、困ってる人を見ないふりって事には絶対ならないな、なんて思ったのであります。