メモつづき。

昨日はラヴクラフトをもういらない、と書きましたが、まだ読み終わってなかった『ダニッチの怪』を書いた後に読みきったところ非常な秀作で、早速昨日の感想を撤回したくなりました。
というか、ラヴクラフトを古典怪奇小説作家で、内容より文章で読ませるタイプ*1だと思ってたのですが、書かれた時代が早い、文章より内容で読ませようとする現代小説風*2サスペンスホラーだと思って読むとすばらしいものだと気付いたのです。
つまりなんか見方が間違っていたというか、内容を際立たせるための簡潔に書かれていた文章を下手な嘘の恐怖をでっち上げるためだけの情景説明だと思っていたので、文章の恐怖はスパイスに過ぎず本質である内容の恐怖を見ればいいと気付いた瞬間に楽しくて仕方がなくなったわけで。
1937年に死んだこの不世出の作家が書き上げた数々の悪夢は今の世の中に溢れている怪物ものや悪霊もの、宇宙人ものなどのホラーを生まれたときから極当たり前のように浴びてきている私たちにとっては目新しいものでもなんでもないのですが、19世紀に生まれた小説家が書いていたものと思って読めば彼の頭の中に棲みつていた数々の悪魔たちが今活きているすべての怪物どもの濫觴であり、これらがいなければエイリアンもグエムル*3も生まれていなかったのに違いないという事に気づき、そしてそれらを見たことも聞いたこともないのに自分の頭の中だけで呼び出すことの出来た彼の偉大さに思いを至らせれば途端に感服させられざるを得なくなります。
むしろ、『インスマウスの夜』『ダニッチの怪』等に関して言わせてもらえれば、そんなことを鑑みることもなくいつの時代にかかれたものだろうと関係なくすばらしいゴシックホラー、サスペンスホラーであり、これらの小説を書いたというだけでただそれだけで評価されて然るべきものでしょう。
そして、書く物語に散りばめられた参考文献や歴史上の人物の名前を見れば異様なほどの博学ぶりに敬服せざるを得ない。ボオドレエル、ユイスマンスなんてもちろん序の口、トリテミウスも当たり前、もはや名前も題名のかけらも聞いたことのないような数々の情報*4の洪水に恐れおののかない訳がありません。
その上、「ネクロノミコン」という架空の聖典をでっちあげ、新しくクトゥルフ神話の世界観作り上げた功績もあるわけでもうすごいこと限りないですよ。超絶的*5偉大さですよ。うん。
とにかくそんな感動があったので書きたくてしょうがなくて勢いだけで書いてしまいました。しかし、自分のつくった数々の作品に一本線を通して、ある一つの世界観で様々な情景が繰り広げられているという風に小説がかける人はすごいです。このラヴクラフト然り、バルザック然り。超人的ですね。一つの作品を書き始めると書き終わるまでの不眠不休の数日間をコーヒーだけで過ごしてしまうというバルザックの逸話がああなるほどと納得してしまいそうになりますからね。そういった作家の本は勢いがあって好きです。読者を巻き込まずにいられない、生き急ぐような勢いがあって。
実はヘッセもそんな勢いがあるように思えるのですよ。

*1:なんというか古典のイメージ

*2:私の勝手な現代小説のイメージ

*3:あんまそういった映画を見ないので例が思い浮かばない

*4:私が悪魔学や陰秘学等に関して浅学だからというのもあると思いますが

*5:最近のマイブーム(古い)の言葉