絆って

NHK-FMの『青春アドベンチャー』はとてもお気に入りの番組だった。だったと過去形なのは、4月の番組編成のおかげで、私が月〜金の夕方に聞いていた再放送がすっぱりなくなってしまったので、全く聞けなくなってしまったからだ。
娘がまだ小学生の頃偶然車の中で聞いた”あるまだすずき”以上のおもしろ話には出会えないが、夕食の仕上げの頃にラジオから流れてくるラジオドラマは、私の落ち着きかけた気持ちにすんなり物語の世界が入ってくる丁度いいタイミングのクールダウンなのだった。
お盆編成なのか、6時から連続ばなしのラジオドラマをやっているのに昨日あたりにやっと気づいた。むりむり怒ってる一昨日は気づかなかったけど、鬼嫁になるのをやめた昨日に気づいたってことだ。普通の生活をしている母息子の家庭の話なんだけど、ちょうど私が聞き耳を立てた時の話が、その小さな息子(最初から聞いてなかったので何歳かは分からないけど、幼稚園くらいかな?)が自分の臍の緒を見せて欲しいといったら、母親(底抜けに明るいキャラ)が卵の殻をみせ、文明が進んだ現代だからあなたは卵で産んだのよと、小さな息子を煙に巻いていた。
息子は、自分は捨て子だったんじゃないか?と思っての質問なのだが、ラジオから聞こえてくるトーンは全然深刻ではなく、軽いコメディタッチなのだ。
その母の勤め先にとてもイケメンの若者がいて、母はその年下の彼といい関係になりつつあるってところで昨日の放送は終わった、と思う。
そんなラジオドラマを聞いたことは、少し忘れかけていたんだけれど、おじいが少し食卓に着くのがゆっくりめだったので、思い出したようにラジオのボリュームを上げたら、もうそのイケメン兄さんと母と息子は新しい家庭を築いていて、息子は母が大学生の頃とても愛した教官の息子で、その息子会った時に、可愛くて可愛くて6ヶ月(だったかな)の赤ん坊だったその息子が欲しくて欲しくてたまらなくなり、その教官と結婚をしてその後すぐその教官が亡くなり、その後二人で生活をしてきたという話を、少し大きくなった息子(小学生高学年か?)に話していた。
おじいが私の気持ちをもり立てるために話しかけてくるので(実は今朝またおじいは私に不愉快な思いをさせたのだ)時々ドラマの方がとぎれてしまったが、おじいが食事を終えたのでラジオドラマの続きを聞くことが出来た。
どうやら、兄さんと母の間の子供の出産を控えているらしい。出産間近になって、イケメン兄さん(父となってる)が、息子に生まれる子供は弟と妹とどちらがいいか?と聞き、弟がいいという息子に、たまごに弟の似顔絵を書き名前を付けて、子供が生まれるまでちゃんとそのたまごの面倒を看るということにした。
たまごは毎日かどうがは聞き逃したけれど、新しいものに変わりその度に顔を書き換えて、新しく生まれてくるはずの赤ちゃんを世話をするようにたまごをかわいがり、母の本当の出産を待っていた。
ある日そのたまごがなくなっているので、驚いた息子は父となったイケメン兄さんに、弟がいなくなってるというと、
「さっき食べたじゃないか」という。何を言ってるか分からない息子に、
「さっき目玉焼きを食べだろう。あれがそのたまごだよ」という。

そうなんだよ。母との絆は臍のをだと先生に教えてもらった息子にたまごの殻をみせた母と繋がってくるんだねぇ。食べてしまって体の一部になってしまった赤ちゃんなんだから、本当に生まれてくる子供とものすごく仲良しになれるんだよと、いう話だったんだけど、私は作者の思うつぼにはまってしまってじんわり泣いていた。

母とも父とも生まれた妹(弟じゃなかった)とも、全く血の繋がりはないけれど、自分と家族は見えないけれど強い絆で結ばれているんだっていう独白で終わったラジオドラマだった。

私もおじいとは全く血が繋がっていないけど、時々めっちゃくちゃ腹が立つって関係が険悪になるけれど、それが修復される度に、いいのか悪いのか分からないけれど、絆が結ばれていくのかなぁ、なんて思ってしまった。

不愉快な出来事はまた今度。ま、別に書かなくもいいかもしれないけどね。