ちょっとしたお別れ

サントリーホールでの朗読劇を観るために、ライブ以外で初めて上京する時、名古屋駅についてハンカチを忘れてきた事に気づき、どれだけ泣いてもいいように駅前のデパート(か?)でタオル地のハンカチを買って以来、舞台を観る時にはほとんど毎回そのハンカチを持って出かけていた。
今回は2日間だったので、その椿ハンカチ(その時の演目のままね)と、後から買い足したハンカチを持ってでかけ、一日に1枚ずつ使って、帰りの新幹線の中でハンカチを出そうとして、その椿ハンカチがない事に気づいた。座席を立つ時に落としてきてしまったのだろうと、今日になって劇場に問い合わせてみた。たった1枚のハンカチなんだけど、大事に大事に使ってきたので、このままなくしてしまうのも残念だから、ハンカチ1枚ごときの事だけど、電話をしてみた。
「そのような落とし物は劇場内では届いていないようです。」と言われた。
そこにあったのなら、何とかして手元へ戻してもらうようにお願いする心積もりでいたのを、あっさりとそこで希望を断ち切られてしまった。
今の私にはなにやら象徴的な出来事のような気がした。はんかちと 一緒に消えた 板の上の人への恋心 かな?2000年には確かに剛の腹の中にいた魔物とは、私はもう会えないかもしれないなんて、ね。

椿の時も原作は読んでいったし、オペラも聞き込んでいった。自分の中に出来ていた椿のイメージと、剛の声だけでその場に拡がる世界は、ちゃんと繋がってた。蒲田も後から原作を読んで一度しか会っていないヤスを思い出し、何度も心が震えた。今回も原作を読んで自分の中に出来上がったその世界と、剛が演じる事であの明治時代の生活が私の胸の中へもう一度戻ってきて、一つのものになる(混ざり合って平面から立体になるような感覚とでもいうのか)ものと思っていた。なんでかなぁ、台詞は音だったんだよなぁ。抑揚はあったけど、思いのこもってる台詞には聞こえなかったなぁ。時代背景を全然理解していないんじゃないかと疑った。千秋楽近くには変わっているのかもしれないと、もう一度舞台を観たかったけど、叶わなかった。届いた劇評もそんな感じなことを書いてるって思うんだけど、ものすごく少数意見なのね。