さいごのひとへや

おや、また知らない間にというか、あっという間に一月たってしまっていたのですね。

母親の認知症外来で”そろそろグループホームへの入所を考える時期ですね”って言われてから、動き始めたのが先月。
いつも母親が通ってるデーサービス施設の事務所のケアマネさんに相談したら、”自分たちも紹介するとしてもネットなんかでさがすから、自分で探してね”なんて言われて、困っていた。
ネットで探した介護付き有料老人ホームへ見学の予約を入れた辺りに、知り合いの介護福祉士さん(おじいのときにも随分お世話になったし)に相談したら、市内の認知症の施設に当たりをつけてくれて、その紹介してもらったところへも母親と妹と三人で見学に行った。

グループホームってしくみがよく分からないでお話を聞きに行ったら、あれこれのご縁が不思議な感じで繋がっていることが分かって、ここでこの話に乗らなかったらきっと後からすんごく困ることになるだろうと、さっさと入所を決めてしまった。
おやじには他人事(というより関わってこなかったんで)なので事後報告。ちょっと早すぎないかって心配だったようだが、ご縁話に乗らないって手はないだろうって事で納得。

意識がちゃんとあるのかどうなのかはっきりしない母親も、あれよあれよという間にそこで暮らすことになってしまった。

母親は自分としてはまだまだ一人暮らしで全然っ大丈夫ぃ!って自信満々なのだけど、それは本人の気持ちだけで、物忘れもものすごく酷くなっているし会話の理解力も普段の二割くらいになっているし、自分では一日中忙しくたち振る舞って片付けをしているつもりなのだけど、まっっったく何も片付いてはいなくて、かえってとっちらかってしまっているし、買い物に行けば同じものばかり買ってきてるようでどんどんものは貯まって行くし、通販でいろんなものを頼んでしまうし、通い慣れているスーパーでも入ったときに置いたカートの置き場所が分からなくなってしまって右往左往してしまったり、何も出来ないで時間だけが過ぎてしまってるのに本人が気づかないので、多分食事も三度は食べてなかったんじゃないかと思われるんでありまして。

とにかく一人でいたら、転んでてもだれも起こしてくれんしそのままになっちゃうから、今まだ元気でしっかり(と言うだけ言っておいて)してるうちに新しい生活に慣れようって言い聞かせて、とにかく3泊くらいのお泊まり支度の用意をさせて、グループホームへ連れて行った。

私も入所前の見学の時に注意された”怒らない!否定しない!”を肝に銘じ、諭すようにして穏やかに接したお陰か、激しく抵抗することもなくお泊まりすることになった。

一日二日たってどうやらやっと自分がどこにいるのかを自覚したのか、毎日くらいに”いつまでお泊まりするや?いつ帰れるや?ウチへ帰りたい。私はここにはいられない。周りの呆けの人とは違う”と、べそべそ泣き言の電話をしてくるようになった。

それは入所の時にも説明を受けていたので、ああ、やっぱり来たか、と余裕を持って受け答えをすることが出来たので、それまでの関係のように、けんかにはならずに、諭すように、”とにかく一人暮らしでは心配だし、そこにいれば私たちも安心だし”を繰り返し、ホームの人たちも随分親切に対応してくださったお陰で、昨日なんかはべそかき電話もなかった。

一昨日の会話。
”私はいつまでここにおるや。”
”ずっとだよ。”
”それなら(今はものがなくて)不便でしょうがない”
”何がいるや?”

お?どうやら落ち着き始めたらしいじゃないか。いいぞ。ってことで、いるものをちゃんとメモしておくように。土曜日に私が迎えに行くから一緒にウチへ取りに行こうって約束をして、今日それをしてきた。

ウチへ入ったら、やっぱりここに居るって言い出しはしないかと(先週はそう言ってべそべそした)心配もしたが、自分のメモを見ながら荷物を揃えていった。
お目当てのものがどこにあるか分からないと、”ああ、もういい。”と、帰る時間が気になるのか、”いつまでもこんなことしとれん”とそこに執着せずに、たいそうな未練もなく玄関のカギをかけていた。

ま、荷物を揃える途中に、何度も何度も同じ説明をはじめてするようにし直した私は偉かったねと、ちょっと言っておこう。

呆けが進んでいくと、子供に返って、子供を親みたいに思うってドラマも昔見たような気がするけど、実際に自分がそんな風になってしまうのに、最初は少しの抵抗とちょっとした寂しさで気持ちが滅入ったりしたけど、やんなきゃいけないなって思えるように最近はなってきた。

今はまだ、年食った親が大人になったむすめを少し頼りにしてるよって位だけど、この進行具合だと割に近い将来、もっと情けない母親を見なきゃいけないんだろうなぁと想像する。ま、過去に何度か結構なしでかしをしてくれてるんで相当な事でない限りまぁまぁ平気かも。

今のホームへの入所をすすめてくれた施設長さんが、いまよりもっともっと大変になるから今入所を決めなきゃ・・・っておっしゃって下さったことが、とてもとてもありがたかった次第であります。

今の部屋が母親の最後から二つ目の部屋になるだろうと思う。

たくさんものにあふれていた家と思うと随分狭い部屋だけど、きっと今の母親には丁度良いサイズなのだろう。

私も長生きしてしまったら最後の一部屋に収まるだけの荷物にしておかなきゃね。なんて思ったり。


で、子供たちへ。
私が通帳とか大事なものを誰かに盗られたって言い出したら、それは明らかに認知症のサインだから早めに診察に連れてってね。
で、早めに専門の施設に入れてね。きっとどこでも楽しめると思うから。
できたらスマたちに近いところがいいなぁ、とか言ってみたりして。