メモ。

最近読んだ本。

世界の涯の物語 (河出文庫)『世界の涯の物語』ロード・ダンセイニ著 中野善夫他訳
最近学校が始まってからめっきり読書時間が減ってしまって全然進みません。で、やっと読み終わった一冊。
最近マイブームだった現代ファンタジーの巨匠ダンセイニの短編集。この人は本名をエドワード・J・M・D・プランケットといって、アイルランドの男爵、第18代ダンセイニ城の城主だそう。つまりペンネームは肩書き、ダンセイニ卿というわけですね。
さて、この本のすごいところは話ごとに全く変わる世界観、目の前にまるでそれが繰り広げられているかのような臨場感、といっぱいあるのですがまず私ががーんとなったのはその語り口の流麗さです。
ちょっと前に読んだ同じくファンタジーの巨匠ジョージ・マクドナルドのいかにも英国、な堅いものと好対照な風のように滑らかで勢いがあって飛び跳ねるような文章で構成されていて、そう!ファンタジーはこうあるべきだっ!すばらしいっ!という感じ。
この本はまず、二百と五十回目の誕生日を迎えたケンタウロス、シェパラルクが花嫁を娶るため住み慣れた岩屋を飛び出す『ケンタウロスの花嫁』というたった7ページ短編から始まるのですが、この話がもう信じられないくらいロマンチックでファンタジックなのです。そして文章自体がケンタウロスが初めて踏みしめる世界を悦びいっぱいに駆け回るかのように風をきって踊っているのです。
もうそれで読者はこの本のとりことなって何の違和感もなく白い城壁の上に見慣れない旗をはためかす町を眼下に見下ろしたり、人喰いギベリン族の塔に恐怖に身を慄かせながら近づいたり、<やけっぱちの雲雀>号と共に荘厳さで海に劣らず恐ろしさでも劣らない砂漠で船を海に戻してくれる北風を待ったりすることになるのです。
ということで(?)かなりのお勧め。最近お勧めの本が多いなぁ。何でも面白いのかな。
ちなみにこの短編集の訳者は中野善夫他数名ですが、大正から昭和の初期にかけては松村みね子西條八十稲垣足穂(私足穂しかわかんないや)らが翻訳していたらしく、足穂は自身の文章に多大なる影響を受けたほど。森鴎外川端康成による翻訳もあるようだ。しかし日本におけるダンセイニ訳者としては荒俣宏がずっとずっと有名です。というか荒俣氏がいたから日本でダンセイニが認知されて言っていいほど。マクドナルドといい、ダンセイニといい、日本に荒俣宏がいたからこそ現代海外ファンタジーが気軽に読めるんです。改めてすごい人だ。蟲類 (1) (世界大博物図鑑)欲しいんだよなぁ。