すいか

先週京都へ出かける前だったかどうかはっきり覚えていないが、台所に忽然と大きなスイカか現れた。というと、不思議現象のようだがそうではなく、おじいが置いておいたことは明らかなのだが、その少し前から生意気な口を利いた嫁に腹を立ててるおじいと、いわれのないお叱りを受け面白くない嫁との間に冷たい空気が流れているので、そのスイカがどうしてそこにあるのかを判明することが出来ないまま、最初に有ったままの状態が続いていた。
それと同じように玄関先にカボチャがごろごろと転がっていたのだが、その一つが触っただけで崩れ、ぶくぶくになにかが吹き出してくるようになっていた。良い出来のカボチャはそんなことが起こらないが、なにかの具合が良くなかったからなのだろう、毎日の直射日光を浴びてそれはどんどん変化をしていった。その変化にやっとおじいも気付き、その緑色の皮の下で何が起こっているか分からないようなカボチャを捨てることにしたようだ。
台所で最初からあったままの状態が続いているスイカも同じようなことになるとまずいと思ったのか分からないが、久しぶりにお昼ご飯の時に私に話しかけてきた。
「スイカ、くわへんのか!」
「そんな大きなスイカ切ってしまっても冷蔵庫に入れられないから、誰かと分けっこしなくちゃ切ることも出来んよ。誰が食べるの?(そんなに大きなスイカ)」
「いらんのか!ほんなら、誰かにやるか。」
「そのスイカ、どうしたの?」
「もらった。」
「(誰にと聞きたいが、話しが面倒になるのがいやだったので)ふうん。でも、おやじもほとんど家におらんし、今の家では食べきれんに。」
「腐っちまうがや!」
「(そんなこと言われても食べきれん物に包丁を入れるわけにはいかんがね)・・・・。」
この程度の会話をして、私はテレビのある部屋へ移動した。
おじいは、昼過ぎにそのスイカを持って、どこかへ出かけた。

ここ数日間、以前からもこれからもずっとそこに存在していそうだったスイカが、今日また忽然と消えた。