土曜日

ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー』 指揮/大植英次

曲 目
ブラームス:悲劇的序曲 op.81・R.シュトラウス交響詩死と変容」 op.24・ベートーヴェン交響曲 第3番 変ホ長調 op.55 「英雄」
アンコール曲
ワーグナー : 「ローエングリーン」より 第3幕への前奏曲エルガー : 「エニグマ変奏曲」より ニムロッド・ブラームスハンガリー舞曲 第5番

を聴きに行く。
当日券で入ったのだが、開演時間直前に買ったので、ほとんど座席が残っておらず、7000円のB席だと二人並んで座れないと窓口で言われる。9000円の席なら2連番があると言われるが、2000円が惜しい私たちはバラバラでB席に座ることにする。初めて入った愛知県芸術劇場コンサートホール。オケを上から見られるんだよと入る前に聞いてはいたけど、本当に真下に舞台があるP1列45番の席である。目の前の手すりの真下にパーカッションがセッティングしてあるので、思わず覗き込んでみたりしていた。まだ誰もいない時にね。きちんと座るとそこだけ私からは見えない。いよいよ開演。指揮者が登場。ちっさい人だ。指揮台に立たれるとほぼ正面にお顔が見える。タクトを振り上げると、衣擦れの音と一緒に大きく息を吸い込むのが聞こえる。静かにゆっくり小さく弦楽器の音から演奏が始まった。ブラームスシュトラウスも多分聴いたことの無い曲だ。でも何となく主旋律は聴いたことがある気がするが、ブラームスブラームスらしく、シュトラウスはやっぱりシュトラウスの音楽だった。指揮者は楽譜を持っていなくて、体全体で指揮をしていた。表情も目線もきっと指揮者の解釈で表現しているんだろうし、それをオケ全体が全身全霊で表現しているように感じた。1曲目が終わった後に”ブラボー”の声がかかり、2曲目もブラボーとともに何時までも拍手が続いた。指揮者が何度も戻って挨拶をし、コンマスと抱擁を交わした。ソロパートの楽団員を一人ずつ立たせ、最後に全員で拍手喝采を浴びていた。そして、休憩。
トイレから戻ると楽器の位置が変わっている。真下のパーカッションは相変わらずだけど(そこは全然見えないし)、目に前にコントラバスが来ていた。休憩前は反対側にあって、一人だけ顔を真っ赤にして演奏してる人がいたのを遠くから見ていたのだが、なんと今は目の前にいる。いえ、いらっしゃる。休憩中に一人だけ舞台の松ヤニや椅子の位置のチェックに出ていらしたらしい。私はその人の後ろや横の姿を上からじっと”なになになにやってるの(キラリン)”と熱い視線を送っていたら、なんとこっちに振り向いた。!!。どういう顔したらいいんだろうと瞬間悩んでいたら、とってもにっこり微笑み返してくださったので、私も穏やかに出来るだけ優雅に見えるようににっこりとした。そして舞台袖へと入って行かれてた。ひぇーーー、素敵!ダンディ!めっちゃめちゃ素敵!なんてかっこいい人なんだろう。惚れ惚れ。そうして、3曲目が始まった。もちろん目の前のコントラバスに視線を送る。いえ、コントラバスを見つめる。いいんだ、その人。指の運びや弓の動かし方どれもがとても優雅なのだ。素敵!でまた、コントラバスは7人(?)だったのだが、その音が動きがすごくぴったりで一つの大きな穏やかなの音の世界に包まれている様に感じ、ものすごく気持ちのいいのである。素敵。しかもその人が時々振り返るように見上げて私ににっこりしてくれる。素敵!嬉しい!<英雄>が終わるまでに何度アイコンタクトを交わしたことだろう。幸せ。いや、演奏もとてもすばらしい。本当にブラボー!!ブラボー!!と声がかかり、拍手は何時までも何時までも続いた。何度も何度も挨拶をして、アンコールに入る。途中でコメントを挟んだ娘のお察しの通りドイツの楽団なのでやはりドイツの作曲家のものでということらしい。アンコール曲が終わるたびにも拍手の嵐。もうこれで本当に終わりですとハンガリー舞曲の演奏に入った。もう私は嬉しくって楽しくって演奏がすばらしくって、フライングの様に手拍子をしてしまっていた(椿姫の乾杯の歌の手拍子ね)。いやん、私が・・私が・・拍手してた。どうしよう、とオロオロしている内に会場全体に手拍子が拡がった。ほっ。曲調が変わって手拍子がやみ、また手拍子をする時には今度は指揮者が大きく手拍子をさそった。会場全体が一つの大きな興奮と感動に包まれて演奏が終わった。ブラボーーー!!ブラボー!!と声がかかる。私は一言も発することが出来なかったが、一階奥の方でスタンディングオベーションをしてる人を見つけた。よしっ私も。大きく拍手をしながら立ち上がると、同時にバスの人が振り返ってにっこりうなずいてくれた。私はとても素敵な演奏でした、の気持ちを込めて大きく大きく拍手をし続けた。

一緒に行ったお姉さんの席は私よりも少し上手の2列めで舞台が全部見えるところだったのだが、最後に立った時には指揮者と目が合ったと言っていらした。これまでに見た中で一番よかったと。

終わってアンケート記入で、他に好きなアーチストという欄があってねと、息子に話したら、即座にSMAPって書いたの!と言う。あったり前じゃん。……。音に酔っていた為、ということにしておいてください。はぁ〜なんて幸せな時間。
日曜は英語のセミナーだ。この感動がとぎれてしまいそうで、少々気が滅入る。ずっとこの余韻に浸っていたいのに。